厚生労働省から日本人食事摂取基準の2020年版が発表になりました。ヘルシーライフデンタルクリニック東京新橋の歯医者。
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東京新橋のヘルシーライフデンタルクリニックです。
健康寿命延伸に働きかけることを目的に、日々歯科診療にあたっています。
今回は、厚生労働省から発表された日本人の食事摂取基準(2020年版)のビタミンCについて記述したいと思います。
ビタミンCについて
厚労省の日本人の食事摂取基準(2020年版)にも以下の記載があります。
”ビタミン C は、皮膚や細胞のコラーゲンの合成に必須である。”
主にビタミンCの作用として知られるのはコラーゲンの合成ですね。
お肌や各血管、歯ぐきの血管・細胞もコラーゲンが豊富ですのでビタミンCは必須です。
ビタミンCが足りなくなるとどうなる?
ビタミンCが欠乏すると壊血病という病気になる。
「壊血病」という病気をご存知ですか。
短くまとめると下記のような病気です。
”ビタミン C が欠乏すると、コラーゲン合成ができないので血管がもろくなり出血傾向となり、壊血病となる。”
ー引用元 厚生労働省 日本人の食事摂取基準よりー
この言葉を読んだときに血管がもろくなりって、どこの血管のことを想像しますか?
厚労省の発表から引用すると、
”壊血病の症状は、 疲労倦怠、いらいらする、顔色が悪い、皮下や歯茎からの出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などである。”
体には、至るところに血管が走っており、各臓器・細胞へ栄養を供給しています。
そのため、「コラーゲン」と聞くと、「お肌」「美容」と連想される方が多いかと思いますが、体の中は血管や骨などを始めとして、コラーゲンだらけです。
ビタミンCの欠乏によって影響を受けるところは様々だということですね。
日ごろから歯ぐきから出血しやすかったり、あざができやすい方も要注意ですよ。
壊血病という病気は、ギリシャ・ローマ時代から「海の紫斑(しはん)病」といわれていて、船乗りがかかる病気だったそうです。
紫斑とはいわゆるあざのことです。
栄養学が医学の中で浸透するまでの劇的な歴史を記した本「栄養学を招いた巨人たち」には以下のようなことが書かれています。
”16世紀初めにインドに公開した船員で壊血病を発症した者は、みかんを食べることで治癒した。”
”17世紀にも船乗りの食事についての著書を出版した学者プラットは、レモンジュースが壊血病の予防手段であると記している。”
”世界一周の航海から帰還した軍艦の船員2000人のうち、実に1400人が壊血病で死亡していたのである。”
ー引用元 「栄養学を招いた巨人たち」よりー
みかんを積んでいる船では壊血病が防げていて、みかんを積んでいない船では壊血病に悩まされていた。
しかしこのような実績がありながら、一世紀近くにわたり、この事実は無視をされ続け、伝染病かなにかではないかと言われ続けていたそうです。
後述しますが、栄養の欠乏によって病気になるという事実が科学・医学に定着するまですごく時間がかかっていますよね。
ビタミンCはその方の体内環境によって需要が変化する
厚生労働省の発表内容には、喫煙者と非喫煙者の比較についても書かれています。
”喫煙者は、非喫煙者よりもビタミン C の必要性が高く 143)、同様のことは受動喫煙者でも認め られている 144,145)。該当者は、まず禁煙が基本的対応であることを認識し、同年代の推奨量以上 にビタミン C を摂取することが推奨される。”
喫煙者の方が需要が増えるだけでなく、受動喫煙者でも需要が増えることが分かっているということですね。
ビタミンCを摂る目的と摂取量は?
壊血病にならないための量と、心臓血管疾患の予防のための量が違う
厚生労働省のビタミンC摂取基準2020年版では、壊血病にならないための基準値のほかに、「病気の予防効果」に対する記述もあります。
”心臓血管系の疾病予防効果や有効な抗酸化作用は、血漿ビタミン C 濃度が 50 µmol/L 程度であれ ば期待できることが疫学研究及び in vitro 研究で示されている 136)。そして、ビタミン C の摂取 量と血漿濃度の関係を報告した 36 論文(対象は 15〜96 歳)のメタ・アナリシスでは、血漿ビタ ミン C 濃度を 50 µmol/L に維持する成人の摂取量は 83.4 mg/日であることが示されている 137)。 ”
”このように、壊血病予防が期待できる量と、心臓血管系の疾病予防効果及び有効な抗酸化作用が期待できる量との差が極めて大きい。”
オーソモレキュラー医学の分野においても、症状改善のために各人が必要な分子量は大きく異なることが言われています。
その差は100倍程度になることもあります。
ビタミンCの摂取量
この部分については見解がわかれるところなのではと考えております。
厚生労働省の発表内容には以下のようなことも記載されています。
”ビタミン C の摂取量と血液中濃度、体外排泄を検討した研究から、1 g/日以上を摂取する意味 はないことが示されている 131,133,142)。種々の疾病発症に対するビタミン C サプリメントの有益 な効果はいまだ明確になっていない 137)。”
一方で、ビタミンCを臨床に用いているスイスの歯科医師からは、薬の使用を抑えることもできているとの報告もあります。
”ほとんどの動物(霊長類とモルモット以外)は、ストレスがかかると肝臓でのビタミンC産生量が通常の3~4倍になる”
”私は、患者が歯科の生理的・精神的ストレスを受ける前にビタミンCを投与するようにしました。その後、私の診療所から抗生物質、抗炎症薬、消毒剤は消え、鎮痛薬も滅多に使わなくなりました。”
-オーソモレキュラー医学の口腔治療への応用より Gilbert H. Crussol ー
Dr.Gilbert H. Crussolはスイス国ローザンヌのForum de Sevelinの教授です。
歯科領域の手術前に用いるビタミンC点滴の量は30gです。
いまだ、エビデンスの構築段階ということもあり(エビデンスというと多施設で多くの患者さん相手に治験などを行い統計解析を行ったものであり、
実際にはそこまでの規模の研究ができることは多くない)、見解が分かれる部分があるのは栄養学の世界ですね。
先ほども前述しましたが、栄養学の歴史と実績を垣間見てみると、
いかに栄養素と病気のつながりが世に広まるまでに時間がかかったかがわかります。
まだまだ時間がかかるかと思いますが、
ご自身の体調、ストレス、体内環境、慢性炎症などを含めて摂取量については、検査・診査・カウンセリングなどを通じながら判断していきましょう。
ビタミンCは過剰摂取の心配はある?
過剰摂取については、過剰な分は尿中に排泄されるため心配はほぼないと考えてよいでしょう。
以下、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)より
”健康な者がビタミン C を過剰に摂取しても消化管からの吸収率が低下し、尿中排泄量が増加す ることから 132,133,139)、ビタミン C は広い摂取範囲で安全と考えられている 138)。したがって、耐容上限量は設定しなかった。”
ビタミンCの摂取について気を付けた方がよい場合とは
腎機能が低下している場合
厚生労働省の発表によれば
”慢性腎臓病患者では、ビタミン C の過剰の補給は、尿 路結石 140)や高蓚酸血症 141)を来すので避けるべきである。”とあります。
慢性的に腎臓機能が低下している方はグラム単位の大量のビタミンC摂取は推奨はできません。
ビタミンCを上手に生活・健康寿命延伸に取り入れましょう
科学は常に覆ってきました。
飛行機がなぜ飛べるかどうか、全身麻酔がなぜ奏功するかどうか、実はまだ科学では解明できていません。
しかしながら、人は飛行機で移動し、全身麻酔下の手術が実行された件数は数え切れません。
どのように情報を取り入れ、どのように自分や家族や知人の健康を獲得するかはあなた次第です。